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ハイパースペクトルセンサー・イメージ分光カメラ
シリーズ名
HyperSpecシリーズ
シリーズ名
HyperSpecシリーズ
ハイパースペクトルカメラを活用したプラスチック廃棄物のリサイクル
廃プラスチックの現状
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プラスチック廃棄物の量は、1950年代から際限なく増え続けており、適切に処理されない廃棄物が海に流出し海洋プラスチック汚染が起きたり、埋め立てや焼却による環境汚染・健康被害の問題が大きくなってきています。このことが各国政府の取り組みへの引き金となり、廃棄物の削減やリサイクルを念頭に置いた製品デザイン、プラスチックのマテリアルリサイクル(再製品化)、ケミカルリサイクル(再原料化)、サーマルリサイクル(熱利用)、生分解性プラスチックを含むバイオプラスチックなど新素材開発などサーキュラーエコノミー(循環型経済)を目指す取り組みが加速しています。
他国に先駆けて環境政策を推進してきたEUでは、包装・包装廃棄物規則により2030年までにすべての包装パッケージがリサイクル可能な設計となる必要があり、2035年までに一般廃棄物のリサイクル率を65%まで到達することを目標に掲げています。
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Plastic futures and their CO2 emissions - Scientific Figure on ResearchGate. Available from:
https://www.researchgate.net/figure/Projections-of-global-plastic-production-waste-generation-and-plastic-stocks-in-use-by_fig1_366093651 [accessed 19 Jun, 2024]
アジアにおいては、欧米諸国が廃棄物を輸出していたが、2018年に中国が廃プラを含む廃棄物の輸入を禁止したことで、台湾やマレーシア、インドネシアなどに変更されていますが、自国の廃棄物もあるため輸入規制への動きがあります。1990年代まではゴミ島と呼ばれていた台湾ですが、現在では非常に高いリサイクル率を達成するリサイクル先進国となっています。日本はPETボトルのリサイクル率は85%を超えており高いものの、廃プラスチック全体では25%程度で、その多くを焼却処分した際の熱エネルギーとして回収(サーマルリサイクル)しています。
アメリカでは、2021年に米国環境保護庁(EPA)から国家リサイクル戦略(National Recycling Strategy)を発表され、2023年からプラスチックのリサイクル率の向上に向けた実施プログラムが開始しています。現在リサイクル率は35%程度ですが、2030年までに50%まで高めることを目標としています。生産者責任や規制は州政府によるローカル規制に留まっています。
プラスチックリサイクル
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効率的にプラスチックリサイクルを行うには、前処理としてまず廃棄物から紙や木材など異なる素材を除去し、ポリマーの種類毎に分類する必要があります。さらに、プラスチックの場合、ベースポリマーに分離する必要があります。一般廃棄物に含まれる代表的なポリマーとしては、PE、PET、PS、PP、PA、PVCが挙げられます。マテリアルリサイクルで再製品化する際は、品質を高めるために単一の種類となるように正確な分別が求められます。廃プラスチックの発生源として、一般的には包装材や食品カップ・トレイ、ペットボトルがありますが、その他にも繊維製品や建築材料などからも排出されます。
ポリマーによる選別は、容器等製品の状態でもシュレッダーでフレーク状になったものでも対応が可能で、赤外線の分光スペクトルによって識別する方法があります。その中でもインラインで測定が行えるハイパースペクトルカメラについて紹介します。ポリマーの分類では特に近赤外(NIR)の波長域に対応したハイパースペクトルカメラが利用されます。ラインスキャンで撮影を行うため、ベルトコンベアで搬送しながらカメラの下を通過するプラスチック片のデータ取得を行うのに適しています。取得したスペクトルデータから分類モデルを作成し、判別結果を出力することができます。分類は、ピクセル単位でも行えますし、多変量解析(ケモメトリックス)による分類モデルを生成してオブジェクトベースで結果を出力することもできます。出力結果からポリマークラスによるトリガー信号をPLCなどに送り、選別処理を行います。
プラスチックの選別には近赤外(NIR)域のハイパースペクトルカメラが適しており、950-1700nmの波長域における異なるポリマーのスペクトル特性が以下の通りです。スペクトルに明確な違いが表れており、素材の分類するのに利用することができます。分類処理には通常統計的なアルゴリズムが利用されますが、ここで利用しているperClass Miraソフトウェアでは機械学習アルゴリズムも活用されています。
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リサイクル可能なプラスチックには、レジ袋などの包装資材や食品容器として利用されるPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、家電外装や自動車部品として利用されるABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PC(ポリカーボネート)、PA(ポリアミド)、建材や配管などで利用されるPVC(ポリ塩化ビニル)があり、選別にハイパースペクトルカメラの活用が期待できます。
ハイパースペクトルカメラを使用したポリマー分類
日常生活で目にすることが多いPE、PET、PP、PSの4つのプラスチック片を素材毎に分類する試験を近赤外(NIR)ハイパースペクトルカメラを使用して行いました。トレーニングデータの取得と分類モデルの作成を行い、モデルの適応と混合したプラスチック片のリアルタイム分類を実施しました。本試験では透明と白の素材を利用しており、4つの素材で見た目変わらないため違いを判断することができません。前述の通り、近赤外ハイパースペクトルカメラでは近赤外波長に対する応答の違いから判別が行えます。今回は使用していませんが、色付きのプラスチックにも対応可能です。
まずは、それぞれの素材でトレーニング用のデータを取得します。2つのスペクトルデータを取得し、1つを分類モデルを作成するためのトレーニングデータとして利用し、もう1つをモデルが機能しているかの評価用に利用します。今回はラボでの簡易的なテストですが、実際に処理ラインへ実装する際はより多くのデータでモデルを作成することになります。
モデルの作成はperClass Miraソフトウェアを使用して行います。UIはユーザーフレンドリーで短時間で簡単にモデル生成が行えます。アルゴリズムなどに関する専門的な知識も必要ありません。最初に、背景(Background)とポリマーの分類クラスを作成し、それぞれのラベリングを行います。ラベリングでは、エッジ部分の選択は避け、できるだけ純粋なスペクトルとなるように選択することが重要となります。選択後、モデル検索を行うと自動的に分類モデル生成が行われます。結果を基にチューニングを行うことも可能です。トレーニングで使用していない2つ目のデータにモデルを適用することで、正しく分類されていることが確認できます。最後に全ての素材のプラスチック片を混ぜてピクセル単位での分類を検証を行います。ピクセル毎の分類以外にも、オブジェクト単位の判別を行うことも可能です。
着色素材や黒色プラスチックの判別
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通常は900-1700nmの近赤外(NIR)域で判別が可能ですが、条件によっては異なる波長域が必要になる場合があります。 PETとPVCはスペクトルの特徴が似ており、1700nmまでの波長域では判別が難しくなります。 ~1.9μmや~2.2μm、~2.5μmなどより長い波長域に対応したモデルが必要となります。
素材だけでなく色による分類も重要な要素となります。例えば、PETは色の無いものの方が利用用途が広くなり価値が高くなります。ポリマー素材による分類と色による分類を1つのプロセスで行う場合は、カラー(RGB)カメラを組み合わせて利用する方法があります。Inno-SpecのColExオプションはRedEyeシリーズと組合せて利用できます。ビームスプリッターを使用して赤外波長はハイパースペクトルカメラへ、可視波長はカラーカメラへ入るように設計されており、それぞれの取得データが統合できるようになっており、スペクトル情報とカラー情報を同時に利用できます。
近赤外(NIR)の波長域は、黒い素材には使うことができません。一般的に黒は、カーボン(炭素)ベースの着色料を使用しており、可視光や近赤外線を吸収して信号が返って来ないため、判別することができません。この用途には、中赤外(MIR)の波長域に対応したモデルが必要となり、 Inno-SpecのBlackEye(2.9~5μm)が利用可能です。
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廃棄物の効果的なリサイクルには、効率的に材料レベルまで選別する必要となります。ハイパースペクトルカメラは、混合プラスチック廃棄物のポリマー毎の選別に適した技術です。解析ソフトウェアと組みわせることで、多変量解析(ケモメトリックス)モデルが生成でき、フレークや容器などの自動選別に活用できます。また、色判別の組合せや黒色樹脂の選別などより特殊な要件に対応するソリューションもラインナップしています。
関連製品
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近赤外・高速
ハイパースペクトルカメラ
NIR:900-1700nm/214バンド
GigEインターフェース
per Class Mira ステージ対応
IP54防水・防塵規格対応
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950~2200nm
マシンビジョン・SWIR
ハイパースペクトルカメラ
9nmからの波長分解能
プッシュブルーム(ラインスキャン)撮影
プラスチック、医薬品などの材料・成分分析
産業用IP65/IP67対応モデル
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2.9~4.2μm(5μm)
マシンビジョン・MWIR
ハイパースペクトルカメラ
InSbセンサで中赤外に対応
プッシュブルーム(ラインスキャン)撮影
産業用の堅牢設計
黒色樹脂、鉱物分析、化学分析など
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RGBカラー画像同時取得
RedEyeシリーズ用オプション
RGB画像を取得・統合
分光+色による判別を実現
産業用の堅牢設計
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ハイパースペクトルデータ
解析ソフトウェア
機械学習などの専門知識は不要
簡単な操作で、分類モデル生成
マルチコアCPU/GPU対応の高速処理
リアルタイム分類処理に対応
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perClass Mira ステージ
ポータブルスキャンシステム
簡単操作で高品質なデータ取得が可能
perClass Miraソフトウェアと連動
デュアルセンサで広波長400-1700/2500nm対応
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